Mini日記
Mini日記
リフター点検その1
2011年6月1日水曜日
車検でミニをSTOCK Vintageさんに預けてます。
車検のついでにいくつか作業をお願いしていますが、その中でも僕的に最も重要な作業が「リフター点検」です。普通の人生ならばマイカーのリフターを点検することなど一生無いと思いますが、僕の場合は、うちのミニの場合はやらねばならないのです。
2009年10月末にエンジンのOHを完了、そのわずか10ヶ月後の2010年8月にリフターが座屈破断してエンジンが壊れました(2010年8月22日記事)。走行距離わずかに5,400kmでした。ノーマルならば数百円、軽量強化品でも1,500円程度のこんな部品一つが割れたために大事なエンジンがパーになったわけです。精神的にもダメージ大きかったです。
修理に際してはリフター本体だけでなく周辺のパーツを含めて細心の注意を払って手を打ちました(2010年10月10日記事)。しかし、それでもその対策で十分かどうかは実際にエンジンをぶん回して距離を走ってみないと分からないんですよね。
2010年11月に修理完了して現在までに7ヶ月走ったので、摩耗をチェックするならばそろそろ頃合いだと思い、車検のついでに点検をお願いしたのでした。ちなみに1,000ccエンジンの場合、リフターはエンジンを降ろさずにエンジン背面のカバーを開けるだけで交換できますが、キャブ、エキマニ、ヘッドを外す必要があるためそこそこの重作業になります。
最初に先回割れた時の状況を簡単に。
リフターはミニスピアーズ販売、ST製のオイルホール付き軽量バルブリフター(1,450円/個)をWPC処理およびスズコーティングして使用。10ヶ月、走行距離3,384マイル(5,414km)で破断。5,414kmのうち3,000kmは慣らし運転でしたので、楽しめたのはわずか2,400kmあまりでした。
破断したリフターを含む吸気側の4本(左上)と排気側の4本(右上)を比べると吸気側の4本は縦方向に深い傷が多く、上側が偏摩耗していました。その中でも割れたリフターは最も摩耗が激しく、20.55mmだった径が20.10mmまで減っていました。
吸気側
2番 上側 20.45 mm 下側 20.55 mm
3番 上側 20.30 mm 下側 20.55 mm
6番 上側 20.40 mm 下側 20.55 mm
7番 上側 20.10 mm 下側 20.55 mm ←割れたヤツ
排気側
1番 上側 20.35 mm 下側 20.55 mm
4番 上側 20.45 mm 下側 20.55 mm
5番 上側 20.35 mm 下側 20.55 mm
8番 上側 20.45 mm 下側 20.55 mm
左から5番、6番、7番、8番リフターを上から見てますが、割れた7番だけ明らかに薄くなっているのが分かります。新品の時に1.5mmだった厚さが、割れたリフターでは先端で1.0mmまで摩耗してました。
割れに至った経緯としては、リフターが偏摩耗して首振りが大きくなってオイル切れを起こし、焼き付いたところをカムに押し上げられて強度低下した部分から座屈破断、と考えてます。
偏摩耗の要因は状況証拠からいくつか考えられます。あるいはそれらの複合要因かもしれませんが、怪しい順に以下のようになります。
1)リフターそのものの材質が悪くて摺動に耐えられず偏摩耗
2)エンジンブロック側のリフター穴が元々減っていてガタが大きく偏摩耗を加速
3)カムのWPC処理によってカム山が異常摩耗し、それに擦られてリフターの首振りが助長
4)ハイリフトのカム、定数の大きなバルブスプリング、少し曲がっていたプッシュロッドが
リフターの振動を助長して偏摩耗を加速
これらの推定要因に対する対策として、以下のような手を打ちました。
1)肉厚の大きなノーマル形状のリフターを選択。スイフチューン製スタンダード形状
(730円/個)をWPC処理およびスズコーティングして使用。
2) エンジンブロックのリフター穴にスリーブを打ち込んでガタつきを修正
3) カムへのWPC処理なし
4)トルク型のリフト量の小さなカム(MD286SP→MD274SP)、バルブスプリングの定数
ダウン(VS39→VS2)、プッシュロッド交換(1000cc用ノーマル)
リフターそのもの、それからリフター周辺も摩耗しにくい安心な方向に変更したわけです。
修理後の使用期間は7ヶ月、走行距離は途中メーターが狂っていて正確な数字は分かりませんがおそらく3,200km程度です。先回割れたリフターの倍程度の肉厚のため万が一同じようなペースで摩耗したとしても7ヶ月では割れるには至らないだろうと踏んでいましたが、摩耗状態をチェックするには良い頃合いかと思います。そんなわけでドキドキしながらプリンミニさんからの連絡を待ちました。
これが今回点検した8本のリフター一式です。左上の写真が吸気側の4本、右上の写真が排気側の4本です。全体に擦り傷が多くてイヤな感じです。特に5番(排気)と6番および7番(吸気)のリフターの縦傷が多くて気が滅入ります。
寸法を測った結果がこちらです。
吸気側
2番 上側 20.52 mm 下側 20.53 mm
3番 上側 20.52 mm 下側 20.54 mm
6番 上側 20.52 mm 下側 20.51 mm
7番 上側 20.50 mm 下側 20.51 mm
排気側
1番 上側 20.51 mm 下側 20.52 mm
4番 上側 20.51 mm 下側 20.53 mm
5番 上側 20.52 mm 下側 20.51 mm
8番 上側 20.47 mm 下側 20.48 mm
・・・特に問題なし。バラツキはあるものの20.5mmを維持していて、径的には新品と言っても良いくらいの状態でした。ちなみに上の測定値はプリンミニさんのデジタル式ノギスで測った数値です。僕のアナログ式のノギスで測ると全て20.50か20.55mmで、異常なしという結果になります。
プリンミニさんが比較のために撮ってくれた写真です。左側はMED製軽量リフター、真ん中が距離不明の1300ccノーマルエンジンから外したリフター、そして右側が今回チェックした走行距離3,200kmのスイフチューン製スタンダード形状のリフター+WPC処理です。
ノーマルエンジンから外したリフターは中央に焼き入れ部分(黒い部分)が残っていて、その上下で焼き入れ部分が摩耗して鉄の地が出ていますが、擦り傷といった感じではなく均一に摩耗している感じです。一方、WPC処理したスイフチューン製リフターは全面に擦り傷が入ってます。
なぜ擦り傷が入るのかを考えてみると、
1)異物説: リフター穴はヘッド周りを潤滑したオイルがオイルパンに戻る通路でもあるため、そこを通るオイルはそれまでに潤滑してきた経路で発生した鉄粉や異物を拾ってきている可能性があり、それを巻き込んで摺動するので傷が入る可能性がある。ノーマルリフターに傷がなくてWPC処理したスイフチューン製リフターに傷が多い理由としては、WPC処理が傷に弱いか、それとも僕のエンジンに時に異物が多いか。
2)首振り説: 僕のエンジンのリフター穴が摩耗してリフターのガタが大きくなっていて、作動時に首振りしてしまっている。前回リフター穴にスリーブを打ち込んでクリアランスを修正したはずなので、それ以降の6ヶ月程度で再び摩耗が進むとは考えにくいが・・・。
どちらにしてもろくな症状ではないですが・・・、プリンミニさんの好意でリフターの穴側の径を測ってくれる手はずになってます。それによってどちらが原因かはっきりすることでしょう。
穴側に問題なければWPC処理が悪いと判断してMEDのリフターをWPC処理なしで組みます。MED製は競技でも使われていて信頼性には定評があるし、潤滑強化を狙ってオイルホールも開けたので、かなり安心できるのではないかと期待しています。それでもなお念のため3ヶ月後に再び開腹して摩耗チェックする予定。
そこまでやって問題なければ僕もトラウマから解放されることでしょう。